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 佐々木正博士 プロフィール
 
 
 
 

佐々木正事務所代表取締役・シャープ元副社長・工学博士

大正4(1915)年5月12日、島根県浜田市生まれ。

昭和13年3月、京都帝国大学工学部電気工学科卒。同年川西機械製作所(神戸工業、現・富士通)を入社。取締役を最後に神戸工業を退社。

昭和39年、早川電気工業(現・シャープ)に転籍。同社長、顧問を歴任する。一貫して電卓をはじめとする研究技術開発に携わり、シャープを日本有数の電子機器メーカーに育てる。その間、日本の半導体産業の礎を築いた。シャープ退社後はソフトバンク相談役。

平成4年、佐々木正事務所代表取締役。

平成6年5月、国際基盤材料研究所を設立し社長に就任、ナノテクノロジーの研究開発に取り組み、現在に至る。

昭和46年機械振興協会賞、アポロ功績賞受賞。昭和48年藍綬褒章、昭和55年通商産業大臣賞、昭和60年勲三等旭日中綬章、平成7年経営者賞(特別賞)などを授与される。

平成15年6月、電気・電子・情報通信分野の世界最大の学会であるIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)から、日本人として5人目となるIEEE名誉会員を授与された。
 

 
 
 佐々木正博士に聞く 週刊東洋経済(2006年12月2日増大号より)
 
 
佐々木正博士に聞く 週刊東洋経済(2006年12月2日増大号より)

日本を支える「モノづくり」

信頼しあうことによって、初めて最高の情報を与え合うことが出来るんですね。すると、まだ自分には分からんことがたくさんあると気づいて、謙虚な姿勢に戻れる。

人間を慢心に陥れないことが重要で、価値観や個性をぶっつけ合う共創の場が必要なんです。→ 92日歳のいまなお、日本の、世界の技道を追求し続ける佐々木正氏に「モノづくり」の想いを伺った。


記者: 

モノまねの物づくりは、すぐにモノマネされる宿命にあると指摘されています。

佐々木;

秘密を守り通せるなんて思わないほうがいいでしょう。製造ラインを見渡せば大抵のことは把握できる。機械が全てをしゃべってしまうのです。それこそ工場に出入りするトラックを見ているだけでも、おおよその見当がついてしまう。しかもモノマネされるまでのスピードが、どんどん速くなっています。私は、日本の物づくりを大変心配しているのですが、この国が生延びていく道を根本から考え直す必要があるのではないでしょうか。しかし、物づくりの現場に「もっとしっかりせんか」などと叫んでもらちが明きません。直ぐにモノされるような物つくりとはきっぱりと決別し、日本人の精神を超えた新しい価値観を創出していかなくてはならないでしょう。


記者: 

日本の物づくりの特長とは何であったのかと振り返るとき、日本刀が多くの示唆を与えているともおっしゃっています

佐々木;

日本刀には、心を込めるというファームウエア的な要素が組み込まれています。決して、サーベルのモノマネにはならなかった。私は、心や魂のこもった物づくりを「物事づくり」と名づけているのですが、物づくりに事づくりというファームウエアをいかに組み込んでいくか、真剣に考える必要があるでしょう。さいわい、物事づくりのコンセプトに賛同される経営者の方々を見かけるようになり、言い出しっぺとしては喜ばしい限りですね。


記者: 

物事づくりだけでなく、共創というコンセプトも佐々木さんのオリジナルです。

佐々木;

学会で注目を浴びるような優れた論文やノーベル賞受賞者リストを見てもわかるように、独創的な人物が一人だけで大きな成果を出すことが難しい時代に入っています。エジソンがいた時代とは明らかに違うのです。特長のある人物が集まり、異なった価値観を持つ者同士が確かな信頼関係の上で共鳴しあわない限り、新しい何かを生み出すことなど出来ない。安心してお互いの個性をぶっつけ合うことができるプラットフォームが共創の基盤となることは言うまでもないでしょう。

以前、と言ってもかなり昔の話になりますが、GEを立て直したジャックウエルチと立ち話をした時、ブレーンストーミングという新しい手法が話題に上がりました。興味を持った私は、帰国後、さっそく部単位で試してみましたが、最初は大失敗に終わりました。仕切り役となる上司は自分と似たような性格の部下を呼び、しかも集まったメンバーの専門領域も同じ。もちろん、これでは効果が見えるはずもありません。そこで、ジャックウエルチに講師の派遣を依頼しました。来日した女性コンサルタントは、さまざまなアドバイスを残していきましたが、「当分、日本からは画期的な製品が出ることはないだろう」とのレポートを提出したと、後日談で知りました。彼女いわく「金太郎のような人間ばかり集まっても、本当のブレーンストーミングにはなり得ない」と。確かに、酸と酸を混ぜ合わせても何も起こりませんが、酸とアルカリならば、化学反応が起こって沈殿物という創造物が生まれるのです。

私は、各事業部長の猛反対を押し切って、それぞれ異なった領域から有能な人材を集めるブレーンストーミングへと、やり方を一変しました。仕切り役には、全く新しいディスプレイを開発するといった使命を与え、同時に大きな権限も委譲します。現場のトップが首を縦に振らなくとも、必要だと判断されたスペシャリストは各事業部から引っこ抜かれていくわけです。当時は緊急プロジェクトと名づけていましたが、会社そのものが進化したことは間違いありません。


記者: 

そうした経験の延長線上で、共創というコンセプトが生まれた。

佐々木;

はい。何よりも信頼しあうことによって初めて最高の情報を与え合うことが出来ます。すると、まだまだ自分には分からんことがたくさんあることに気付く。謙虚な姿勢に戻れるでしょう。人間を慢心に陥れない場こそ必要なのです。子どもの教育にしたって例外ではありません。自分の価値観の範囲内で囲ってしまったら子どもの才能を育てることは出来ないでしょう。

この9月には、米国のダラスで8名のノーベル賞受賞者と話し合う機会がありました。そこで私は言ったんです。あなた方はサイエンスで最高を極めました。では、最高の上には何があるのですか、と。常に上には上があることを忘れてはいけません。人間努力を怠ってはならないのです。

NASAの仕事をしていた時に、呼ばれていたニックネームがロケット佐々木でした。ジェット機は着陸できますが、ロケットは止まることがない。常に上へ上へとエンジンを噴射し続けなくてはならないのです。


記者: 

いま、佐々木さんのロケットはアンチエイジングのフロンティアに向かっていると伺いました。

佐々木;

やはり、健康は大事です。人間は遺伝子どおりの生活が出来れば125歳まで生き続けられるとの報告書をご存知でしょうか。私は今年92歳であちこち忙しく動き回っていますが、人生90歳くらいまではいきいきとしていたい。そこで、西洋の予防学と中国で4000年の歴史を持つといわれる漢方とが手を結んでアンチエイジングの研究開発に挑むプロジェクトに着手したのです。11月7日から、夫はドイツで教育を受け、妻は中国の漢方を体系化すべく論文を仕上げたという香港の学者夫妻を中心に据えた研究プロジェクトが香港で始まろうとしています。米国ではライフエックステンションとも呼ばれていますが、元気な高齢者が増えることで経験や知識を若い世代に移植することも可能となります。もっともっと世代を超えて、お互いが最高の情報を出し合い、価値観や個性をぶっつけ合う共創の場が必要なのです。

アンチエイジングとともに、最後は心とは何かという命題にも迫りたい。来年は、いろいろな領域が面白くなりそうですし、私自身の共創も終わることがありません。
 

週刊東洋経済(2006年12月2日増大号より)

 
 
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